日本人にとってあまり馴染みが無い「イスラム文化」ですが、イスラム圏を旅するうちに、私はモスク(イスラム教の礼拝堂) の美しさにすっかり魅了されてしまいました。
そして、イラン旅で最も楽しみにしていたのが、シーラーズにあるピンクモスクへの訪問でした。
ここを目当てにシーラーズに行く人も多いようで、イギリスの旅行誌では “奇跡のモスク” と紹介されたりと、いま人気上昇中のスポットです。
本記事では、そのピンクモスクの魅力と、訪れる際に知っておきたい情報をお届けします。
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シーラーズのピンクモスクとは?
この美しいモスクは、イラン南部の観光都市シーラーズ (Shiraz) にあります。
“ピンクモスク” という呼び名は通称で、正式名称は「マスジェデ・ナスィーロル・モルク / Nasir ol Molk Mosque」といいます。
(※ペルシャ語で モスクのことをマスジェデ / masjidという)
このモスクの最大のハイライトは西の礼拝堂で、朝早い時間にだけ見ることのできる神秘的な絶景があります。
中庭に面する窓一面にはめ込まれたステンドグラスから陽光が差し込み、モスク全体を七色に染め上げる様子は、圧巻の光景です。
この世のものとは思えないほど美しい絶景が、目の前に広がっていました。
室内に降り注ぐ光が、床に敷き詰めたペルシア絨毯にカラフルな模様を描き、幻想的な空間を創り上げています。
ステンドグラスが描く光の芸術は、緻密に織り込まれたペルシャ絨毯の上にくっきりと色を加え、モスクの柱も虹色に染めてくれます。
このピンクモスク、ここ数年の間に旅人界隈では有名なスポットとなり、私が訪れた日もたくさんの観光客で賑わっていました。
イラン滞在中、日本人にはほとんど出会わなかったのですが、このピンクモスクだけ日本人観光客が大量に発生していて、日本人ってこんなにいたんだ!と驚くほどでした(笑)
▼ピンクモスクで知り合った日本人の方が撮影してくれたお気に入りの写真
photo by:nkento1120
ステンドグラスだけじゃない、ピンクモスクの魅力
ステンドグラスが描く光の芸術に焦点が当てられるピンクモスクですが、ナスィーロルの魅力はそれだけにとどまりません。
モスクの天井・壁面、外装を飾っているイスラム伝統のタイル飾りも、負けず劣らず素敵なのです。
“ピンクモスク” という通称も、薔薇をモチーフにしたタイルが数多く使用されていて、モスク全体がほのかにピンク色に見えることから、そう呼ばれるようになったそうです。
シーラーズは “薔薇の都” と呼ばれる美しい都市で、他にも薔薇をモチーフとしたシーラーズのイスラム建築を多数見かけました。
ピンクモスクには、シーラーズのシンボルである薔薇の花がタイルに描かれている事から、“ローズモスク” とも呼ばれることもあります。
薔薇のモチーフは手作業で描かれており、非常に繊細で美しい職人技に心震えます。
▼西の礼拝堂の美しい天井。薔薇の礼拝堂なんて、なんだか素敵♡
- 窓のステンドグラスから差し込む七色の陽光
- 緻密に織り込まれたペルシャ絨毯
- 薔薇をモチーフとした繊細で美しいタイル
この3つを兼ね備えた礼拝堂は、想像を絶するような美しさがありました。
モスクの “本来の目的” が失われている件
そもそも、モスクとはイスラム教徒が礼拝 (お祈り) を行うための施設のことで、このイスラム建築の本来の目的は “祈る” ことです。
現に、ピンクモスク西の礼拝堂の入口には「Prayer Hall」と書かれた看板が立っています。
私は、イランでピンクモスク以外にも数々のモスクを訪れたのですが、礼拝堂内ではイスラム教信者の方々が熱心にお祈りをしていた為、その邪魔にならないよう気を配って写真撮影を行っていました。
* … * … * … * …*
しかし、このモスクに限っては、状況が異なっていました。
観光客から絶大な人気を誇るピンクモスクでは、現地人よりも観光客の数のほうが圧倒的に多く、西の礼拝堂内では、観光客によるガチ撮影会が繰り広げられておりました。
▼一眼レフ率高めなガチ勢の方々
▼ステンドグラスから陽光が差し込むな否や、礼拝堂内はシャッター音の嵐
観光客の写真に懸ける情熱がすさまじい…!
ここで何百枚もの写真を撮っていた私がいうのもアレですが、
ゆかり
と思いきや、イラン人もめっちゃ写真撮ってる!!!(笑)
▼そして、何人ものイラン人に写真撮影を求められる日本人(私)
結論 ピンクモスクでは、現地の人も含めて祈ってる人は少ない
このピンクモスク、元々は邸宅だったらしいのですが、持ち主や設計者も、まさか後世でこのような状況になっているとは、夢にも思ってなかっただろうな…。
▼礼拝堂内の片隅に置いてあるコーラン (イスラム教の聖典) が寂しげに映っている図
礼拝堂そのものがフォトジェニックすぎるあまり、モスクの “本来の目的” が失われているような気もしますが、
とはいえ、イスラム教の方々にとっては神聖な建物ですので、あまりにも騒ぎすぎるのはよくないと思います…写真の場所取りがらみで大声で喧嘩してる中国人おったけど…
ピンクモスクを訪れる絶好のコンディションとは?
ここからは、これからピンクモスクを訪れる人向けのインフォメーションなのですが、この色彩溢れる神秘的な空間は、いくつかのコンディションが揃って成立する、いわば “条件付きの絶景” です。
リサーチ不足で後悔することがないよう、ぜひ最後までお読みください。
まず結論から書くと、オススメのコンディションは下記です。
- 訪れる絶好の天気:晴れ
- 訪れる絶好の時期:冬季
- 訪れる絶好の時間帯:朝7時半~9時
- 訪れる絶好の曜日:金曜日以外
訪れる絶好の天気
最も重要な要素は、天気です。
中庭に面する窓一面のステンドグラスから陽光が差し込むことが、ピンクモスクの美しさの決め手となります。
よって、言うまでもなく晴れの日がベストです。
曇りの日であっても、たまに雲と雲の間から太陽が顔を出す瞬間がある場合があるので、そのタイミングを見計らってシャッターを切れば、美しい写真を撮ることは可能です。
ただ、やはり晴れの日よりは光のボリュームに欠けます。
▼左:晴れの日、右:曇りの日
このように、晴れの日の写真のほうが、絨毯や壁面にくっきりとステンドグラスの色が写っていることが、おわかりいただけますか?
私の場合、3日連続で通って、1日目と2日目は曇り、三度目の正直で3日目にやっと晴れました。
天気に関しては、努力でどうにかできる問題でもないので、日程に余裕を持つことをおすすめします。
訪れる絶好の時期
ベストは冬、最悪なのは夏です。
冬季がおすすめな理由として、冬は太陽の位置が低いので、朝はほぼ真横から太陽光が差し込み、建物の奥の方まで広範囲にステンドグラスの色が届くからです。
とはいえ、「夏場のほうが光が強くて良いのでは?」と思うもいらっしゃるかもしれませんが、逆にその日差しの強さが難点で、夏場は礼拝所内がの温度が高温になります。
気温の上昇を防ぐために、日によっては窓のステンドグラスがカーテンで覆われ、せっかくの陽光が遮られてしまうのです。
ピンクモスクのコンディションに限らず、夏のイランはかなり暑いので、観光するのも大変ですし、避けたほうがよいでしょう。
訪れる絶好の時間帯
礼拝堂の窓は東側にあるため、早朝の太陽がまだ低い位置にある時間帯だけでしか、その美しさを味わうことができません。
冬季に訪れる場合、ベストな時間帯は朝7時半~9時です。
ゆかり
私は、気合を入れすぎるあまり(笑)、7時のOPENと同時に入場しました。
一番乗りイェーイ!!!と思ったら、人が居ないのはいいけど光が無い…てか暗い…。
7:30を過ぎたころから、ようやく礼拝堂内に光が入ってきました。でも、まだまだ光の量が少ないです。
ここから時間が経つにつれて陽光の角度が下がり、絨毯にもステンドグラスの色が写り始めます。
8:00を過ぎたあたりから、いよいよピンクモスクがその実力を発揮し始めます。
この頃から続々と観光客がやってきて、どんどん人が増えてきます。
そして、8:30を過ぎたくらいに、陽光がモスク全体を七色に染め上げ、クライマックスを迎えます。
しかし、この時点で観光客の数も相当増えている為、人が写りこまない写真を撮るのに苦労します。
9時を過ぎたころには、大量の観光客がなだれ込んできます。中国人団体客の多さよよよ…
これ以降も、陽光の強さと範囲は持続するのですが、人の声でガヤガヤする礼拝堂に、もはや幻想的な雰囲気は無くなっています。
10:00を過ぎると、陽光が届く範囲が縮小を始めるため、このあたりがもう限界なんじゃないでしょうか。
ゆかり
訪れる絶好の曜日
曜日に関しては、できれば金曜日は避けたほうがいいです。
理由は、金曜日はイスラム教の休日ですので、現地のイラン人たちもモスクを訪れる為、礼拝堂内がさらに混雑するからです。
私は、水曜・木曜・金曜に訪れ、最も金曜日が混雑してました。
正式名称 マスジェデ・ナスィーロル・モルク / Nasir ol Molk Mosque
営業時間 朝7時~ (※地球の歩き方には8時と記載されていますが、7時から営業してました)
入場料金 20万Rls (※235円、1円=850Rls)
※2019年1月時点
さいごに
“ピンクモスク” といえば、マレーシアのクアラルンプールにあるプトラモスクが有名ですが、イランのピンクモスクもそれに劣らず…いや、それ以上に幻想的でした。
私は3日連続で通ったくらいその魅力に憑りつかれてしまったので(笑)、この絶景を見るためにシーラーズを訪れる価値はアリですよ!
今後ピンクモスクを訪れる方の参考になれば幸いです。
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