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厳格なイスラム教徒の国「イラン」を旅して困ったこと・注意点

Iran note

前記事「イランに行くべき5つの理由」で、イランの魅力をアツく語ってきた私ですが、

一方で、旅行中は日本とは異なる慣習・ルールに戸惑ったことも事実です。

もちろん、“異国に行く” 以上、どの国を訪れようともカルチャーショックがつきまとうものですが、

イランの場合、厳格なイスラム教徒の国であることに加え、アメリカを含む西側諸国から経済制裁を受けている関係で、

他の国・地域と比べて、いろんな意味で旅の難易度が上がっているように思います。

そこで、前記事には書かなかった、イラン旅行のデメリットの部分 (訪れて困ったこと・注意点) についても触れていきます。

※2019年1月時点での情報です。今後、世界情勢等の変化により状況が変わる可能性もございますので、外務省渡航情報で必ず最新の情報を確認してください。

経済制裁の影響により、あらゆる海外のサービスが使えない

2019年現在、半鎖国状態となっているイランでは、世界中であたりまえのように使われているサービスが利用不可となっています。

イランでは利用できないサービスのとして、

クレジットカード

国際カードブランドのVisa・Mastercard・American Express等はアメリカの企業ですので、事実上、イラン国内でのカード決済は不可能となっています。

空港ですら一切カードが使えず、やる気ねええええ!!!と頭を抱えたのも記憶に新しいです(笑)

クレジットカード

また、現地の通貨を得る手段として、「現地ATMでのキャッシング」を利用する人も多いかと思いますが、

対応しているのはイラン国内で発行されたキャッシュカードに限られますので、外国人がATMでお金を引き出すことはできません。

そんなわけで、イラン通貨 (Rls / リアル) を得る手段は「現金両替」以外に道はありません。

海外ホテル予約サイト

現地のホテルを予約する際に重宝する、Booking.com等の海外ホテル予約サイトも、イランでは利用することができません。

Booking イラン

ですので、イランのホテルを探す際は、TripAdvisor (トリップアドバイザー)で一括検索するのがスムーズだと思います。

ホテルによっては、公式サイトでネット予約を受け付けているケースもあります。

私は、イランでカウチサーフィン (Couch Surfing) をメインで使っていた為、ホテル泊はご無沙汰でしたが、一度だけシーラーズの中級ホテルを利用しました。

宿泊料金は事前 (予約時) にカード決済でした。(←イラン旅で唯一クレカを使った瞬間がこれw)

イラン カウチサーフィン イランでカウチサーフィンを使ってみたら、熱烈なおもてなしを受けて心が温かくなった

海外航空券予約サイト (国内線のみ)

イランは国土が広いので、飛行機はメジャーな移動手段ではあるのですが、スカイスキャナー 等の海外航空券予約サイトでイランの国内線を予約することはできません。

国内線の航空券を、旅行者が自力で予約するというのは難しい (不可能?) な為、旅行代理店を通して購入する必要があります。

また、経済制裁により機体の修理部品を輸入できない状況が続いているらしく、安全性を疑った私は、飛行機ではなく長距離バス寝台列車を利用しました。

他にも、どの国でも必ず見かける海外のチェーン店舗 (マクドナルド・スターバックス等)が、イランには一切無かったりと、滞在中は制裁の波をひしひしと感じました。

 

外国人でもイスラム教のルールに従う必要がある

私は、イラン含めイスラム教の国々を何度か訪れる機会がありましたが、その戒律を、

  • 自国民がどこまで厳しく守っているか
  • 訪れた外国人(異教徒)にどこまでルールを守らせるか

・・・というのは国によって大きく異なります。

いちばん観光客に寛大であろうドバイは、「全身黒ずくめのアバヤを着た現地女性」と「ノースリーブ+短パンの欧米人女性」が共存していて、かなりシュールな光景だったりするのですが、笑

厳格なイスラム教の国であるイランは、外国人といえども戒律を守ることを要求されます。

イスラムの女性

ですので、イランを訪れる際は、宗教的なルールをしっかりと把握・理解しなくてはなりません。

アルコール禁止

イランでは酒類の販売や飲酒が固く禁じられており、たとえ異教徒であろうと、国内でアルコール類を手に入れることは難しいです。

私は普段からお酒を飲まないので不便に感じませんでしたが、旅先での飲酒を楽しみにしている人にとっては、辛い現実ですね。。。

バックパックにお酒を忍ばせて、国外からこっそり持ち込んでいる旅行者もいるようですが、もし見つかったら大変なことになるでしょう。

女性はスカーフ着用が義務

さらに女性は服装に関する規定があり、肌の露出を避けるのが原則です。

イラン人女性の多くは、チャドルと呼ばれる黒い布で、頭から足首までをすっぽり覆っています。

イラン iran

異教徒の女性に関しては、そこまで厳格な規定は無いものの、スカーフ着用が義務化されており、外国人もスカーフで髪の毛を覆い隠す必要があります。

イランには「宗教警察」なるものが存在し、女性たちが規定に沿った服装をしているかどうかを監視しています。

例えると「生徒指導の先生が女子高生の制服のスカート丈を注意している構図」といったところでしょうか(笑)

それにしても、服装指導を国家レベルで実施しているところが驚きです。

また、男性に関しても、むやみに肌を露出するのはマナー違反で、短パンや半袖シャツはNGです。

 

イラン政府によるインターネット規制がある

日本で暮らしていると、あたりまえのように様々なサイトに自由にアクセスすることができ、あたりまえのようにソーシャルメディア (SNS) を使用することができますが、

海外に出てみると、中にはその “あたりまえ” が通用しない国もあります。

インターネット規制

中国政府による強力なネット規制は有名ですが、イラン国内においても中国と同じようなことが起こっています。

イランではSNSの多くが規制対象となっており、私は ひと手間かけて (=VPNを用いて) ネット規制を回避していました。

 VPNとは何ぞや?という方は、こちらの記事をご覧ください

ネット規制のある国で不便を回避!海外で使えるVPNサービスとは?【初心者向けに基礎から解説】

 

ペルシャ語が難解すぎる

イランの公用語はペルシャ語です。

流暢な英語を話すイラン人がいる一方で、中年~年配の方々には英語が全く通じないことも多かったです。

イラン ペルシャ語

そしてこのペルシャ語なのですが、私の中ではもはや「文字」というより「ミミズ」にしか見えず、どこが分節なのか、どこからどこまでが1語なのか、それすらも理解できませんでした。

▼ペルシャ語で書かれた日本地図

ペルシャ語 日本地図

言語の観点からみた「旅の難易度が高い国」をレベル別に表すと、

  • レベル❶:公用語が英語の国
  • レベル❷:公用語が英語ではないが通じる国
  • レベル❸:英語が通じず、アルファベットを使う言語の国 (例:スペイン語圏、フランス語圏等)
  • レベル❹:英語が通じず、アルファベット以外の文字を使う言語の国 (例:アラビア文字、ペルシャ文字等)

・・・となり、「英語が通じず、ペルシャ文字を使う言語の国」イランは、言わずもがな最難関 (レベル❹)です。

さらに厄介なのが、イランでは「バス停の標識の番号」「商品の値段」等々の数字が、算用数字ではなくペルシャ数字で書かれていることが非常に多いです。

何ひとつ読めないタクシーのレシート(笑)

イラン タクシーレシート

数字までもがペルシャ語表記となっているイランにおいて、

もし算用数字しか知らなかった場合、言葉だけでなく数字の意味さえも理解することができず、相当苦労すると思います。

ですので、事前に最低でも0~9のペルシャ数字をしっかり暗記した状態で渡航するようにしてください。

ペルシャ数字を覚える際は、こちらのサイトを見るのがおすすめです。

参考 ペルシア語/0~1000までの数字外部サイト

 

西暦ではなくイラン暦が主流

日本では1873年 (明治6年) に導入されて以来、主流となっている「西暦 (グレゴリオ暦)」。

西暦は、現在において世界で最も広く使われている紀年法なので、例えば日本の “2018年12月31日” は、アメリカに行っても同じく “2018年12月31日” です。

しかし、イランでは西暦ではなくイラン暦が使われており、2018年12月31日をイラン暦に変換すると “1397年10月10日” なのです。

ゆかり

私がイランを訪れた2018年の大晦日は、イラン人からすればフツーの平日ですので、「年越し?え?何それおいしいの?」的な状態です。カウントダウンイベントがあるはずもなく、ひとり寂しく年を越しました(号泣)

例えば、イランでバスチケットを購入する際に、窓口で「12月30日のチケットが~」とか言ったところで、地元の人はイラン暦で生活しているため通じないわけです。

▼バスチケットの日付もイラン暦かつペルシャ数字

イラン バスチケット

滞在中は、スマホアプリで西暦をイラン暦に変換して日付を把握していました。

▼イラン旅の必須アプリ、Persian Calender

Persian Calendar

西暦とイラン暦

今のところ、私が渡航した中で西暦が主流でない国はイランだけだったので、初めはなかなか慣れませんでした。

 

通貨(リアル)の桁が大きすぎる

イランの現地通貨は「イラン・リアル」といい、表記は「Rls」です。

2018年5月、トランプ大統領はイラン核合意からの離脱を発表し、イランの通貨が暴落しました。

同年に、アメリカによる経済制裁が再開され、イランでは、急激なドル高・リアル安が進んでいます。

▼テヘラン空港の両替所

テヘラン空港の両替所

イランに到着後、私はすぐに空港の銀行で両替を行ったのですが、窓口のお姉さんに2万円を渡し、返されたイラン紙幣の金額はというと、17,000,000 Rls (1700万リアル)!!!

(※2018年12月時点、1円=850Rls)

海外では高額紙幣は現地の商店で受け取ってもらえないことが多い為、(理由はおつりが渡せないから)

私は、海外での両替時に少額紙幣を多めにもらうようにしているのですが、

これをイランでやってしまうと、広辞苑並みの厚みの札束 (笑)になりかねないため、ほとんどを高額紙幣で受け取りました。

それでもかなりの枚数となり、受け取った金額領収書の金額が合っているかチェックするのに、かなりの時間を要しました。

ちなみに、日本で最も高額な紙幣と言えば、ご存知の通り諭吉ちゃん (一万円札) ですが、イランで最も高額な紙幣は50万リアルです。

でも、その50万リアルは、日本円に換算すると600円足らずです。

イランの高額紙幣

ゆかり

世界は、我々が思っているよりも大きな数字で回っているようですね。。。(遠い目)

ちなみに、私の英語力は中学生レベルなので、

「Four hundred fifty thousand Rls. (45万リアル)」…というように数字の桁が大きくなると、頭の中で即座に英語を理解することができず、

イランで値段を尋ねるときはiPhoneの電卓アプリを使い、お店の人に金額を入力してもらってました(笑)

 

アメリカへの入国が面倒になる

アメリカとイランは以前より仲が悪く、トランプ政権からも相当嫌われており、イランへの渡航履歴があるだけでアメリカへの入国が面倒になってしまいます。

具体的には、日本国籍の旅行者が観光目的でアメリカへ行く場合、

  • 一般的な日本人→ 電子渡航認証システム (ESTA) を申請 (※ビザ無し渡航が可能)
  • イランへの渡航履歴がある日本人 → 観光を目的とする渡航をする場合は非移民ビザ (観光ビザ / B2ビザ) を取得

つまり、イランに行ってしまうと、以後アメリカに行く際にビザが必要となってしまうのです。

ESTAはネット上でカンタンに申請できるので、さほど労力もかからないのですが、

ビザを取得する場合、わざわざアメリカ大使館 (東京 or 大阪) まで出向いて面接を受ける必要があったりと、ずいぶん面倒です。

また、このルールは、アメリカ本土の旅行のみならず、

  • ハワイ・グアム島の離島に行く場合
  • 第三国へ渡航するためにアメリカを通過 (トランジット) する場合

にも適応される為、イラン旅行を検討する際は、アメリカへの渡航とを天秤にかけることになります。

ちなみに、昔のイランビザは、パスポートに貼り付けられるタイプだったのですが、

2018年10月より制度が変わり、イランビザが別紙 (A4ペラの紙)となり、かつ、パスポートに出入国スタンプが押されなくなりました。

つまり、私の場合、パスポートにイランの渡航履歴は一切刻まれていないのです。

旅人界隈では「ビザを取得しなくてもアメリカに行ける説」が浮上していますが、ESTAで入国できず日本に強制送還された人の話をTwitterで見かけたので、ビザはきちんと取得しましょう。

なお、ネット上で見かける「パスポートを更新すればESTA取得できる」というのは誤情報なので、鵜呑みにしないでください。

※2022年8月追記:米国ビザ取得しました

ゆかり

インドビザの10倍大変でしたが、とはいえ、過去にイランへ行ったことは1ミリも後悔していません!!!米国ビザは、一度取得してしまえば10年間有効なので、これであと10年は安泰だわ

 

補足:女ひとり旅での注意点

イスラム圏においては、「女性がひとりで旅をすることなどありえない」というのが常識で、現地のイラン人にとって、女性がひとりで歩いている姿は異様に映るようです。

ひと昔前は、独身ひとり旅の女性には様々な制約が及んでいたようで、

  • イランビザ取得は難しい
  • レストランで入店を拒否される
  • ホテルでも宿泊を拒否される

・・・等々の書き込みがネット上に見られました。

そんな私も、独身女性ひとり旅という負の3拍子(笑)が揃っていましたが、

ビザはすんなり下りましたし、レストランやホテル等で入店を拒否された経験は一度もありません。

イランで危険な目に遭ったことは一度も無く、強いていえば、現地人男性からのナンパが多くて鬱陶しかったくらいでしょうか。

女性にとって、昔と比べればずいぶんと旅しやすい環境になりつつあると思います。

 

まとめ:それでもイランは訪れる価値のある国

旅行中、日本とは異なる慣習・ルールに戸惑ったことは確かなのですが、それを差し引いても、イランは私にとっては多彩な魅力に溢れた国でした。

振り返ってみても、楽しかった思い出・記憶ばかりで溢れてますし、

文化の違いも、むしろ「こんな考え方もあるんだ!おもしろい!」と楽しんでしまえば、旅がもっと素敵なものになるでしょう。

日本人にとって、イランはまだまだ馴染みの無い国ではあるものの、興味のある人は是非訪れてみてほしいと思います。

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