ユーレイルパスは、ヨーロッパの各国の国鉄 (または国鉄に相当する鉄道会社) が乗り放題となるチケットです。
日本にも、Japan Rail Pass という外国人専用の JR路線乗り放題チケットがあるように、ユーレイルパスはその “ヨーロッパ版” で、外国人向けの優待料金となっています。
この記事を読んでいるあなたも、旅の移動手段として、鉄道パスを検討されているのではないでしょうか。
私自身、ヨーロッパの鉄道商品に関する情報を集めていた際に、ユーレイルパスの存在を知り、何度か利用した経験があるのですが、
便利な商品であるいっぽう、そのルールが複雑で、全体像を理解するのに時間を要してしまいました。
そこで本記事では、自らの経験を元に、過去の私が知りたかった情報をまとめてみました。
まずは各販売会社の公式サイトをチェックしておきたい、という方はこちら
もくじ:タップで該当箇所にジャンプ
国鉄乗り放題!ユーレイルパスの種類と選び方
まずはユーレイルパスの基本情報として、その種類と選び方について説明します。
(ややこしいことに笑) ひとくちに “ユーレイルパス” といっても、数え切れないほど 様々な種類があるんです。
でも、安心してください!あなたが選ぶべきユーレイルパスは、下記の3ステップで分かります。
- エリア (適用国) を選ぶ
- 利用期間を選ぶ
- 座席クラスを選ぶ
STEP①:エリア (適用国) を選ぶ
パスの種類によって適用されるエリア (適用国) が異なっており、ヨーロッパ全土~1ヶ国単体利用まで、バリエーション豊富なラインナップとなっています。
ヨーロッパ全土
ユーレイル グローバルパス:最も適用範囲が広く、ヨーロッパ 33ヶ国で利用可能
適応国:イギリス / アイルランド / イタリア / オーストリア / オランダ / ギリシャ / クロアチア / スイス / スウェーデン / スペイン / スロヴァキア / スロベニア / セルビア / チェコ / デンマーク / ドイツ / トルコ / ノルウェー / ハンガリー / フィンランド / フランス / ブルガリア / ベルギー / ポーランド / ポルトガル / マケドニア / モンテネグロ / リトアニア / ルーマニア / ルクセンブルク / エストニア / ラトビア / ボスニア・ヘルツェゴビナ
地域限定
ユーレイル ベネルクスパス:ベネルクス3ヶ国 (オランダ / ベルギー / ルクセンブルク) で利用可能
ユーレイル スカンジナビアパス:北欧4ヶ国 (デンマーク / スウェーデン / ノルウェー / フィンランド) で利用可能
ヨーロピアンイーストパス:中東欧4ヶ国 (チェコ / スロヴァキア / オーストリア / ハンガリー) で利用可能
1ヶ国限定
ユーレイル イタリアパス、ユーレイル フランスパス、ユーレイル スペインパス 他、多数
ヨーロッパの大半の国では、国内の国鉄 (または国鉄に相当する鉄道会社) が乗り放題となる鉄道パスがあります。1つの国をじっくり観光したい方におすすめです。
隣接する2~4ヶ国を選択できる ユーレイル セレクトパスは、2018年で販売終了となりました。
STEP②:利用期間を選ぶ
次に利用期間を選びます。同じ利用日数でも、連日か否かで2つのタイプに分けられます。
連続タイプ
一定期間に毎日利用できるタイプのパスです。
※ユーレイルグローバルパスの場合、15日・22日・1ヶ月・2ヶ月・3ヶ月から選択可能
フレキシータイプ
一定期間内に指定の日数分 利用日を選んで使うタイプのパスです。
(※パスによっては フレキシータイプのみ)
連続パスよりは割高となりますが、鉄道移動が連日ではない予定の方におすすめのパスです。
※ユーレイルグローバルパスの場合、4日・5日・7日(有効期間1ヶ月)、10日・15日(有効期間2ヶ月) から選択可能
例えば 4日間のパスの場合、有効期間の1ヶ月以内であれば、合計4日間まで利用日 (乗車日) を自由に選ぶことができます。
利用日をあらかじめ決める必要はありません。
STEP③:座席クラスを選ぶ
ヨーロッパ諸国の鉄道には、主に1等座席 (First Class)・2等座席 (Second Class) の2つの座席クラスがあり、
ユーレイルパスに関しても、1等パスと2等パスで料金が異なります。
左:1等座席 右:2等座席
「1等と2等の違いがイマイチ分からない」という方は、こちらの関連記事をご覧ください。
ヨーロッパ鉄道の1等車と2等車は何が違う?ケース別に選び方を解説ゆかり
ユーレイルパスの購入は、各販売会社の公式サイトより受け付けてます
ユーレイルパスのメリット
ではここからは、ユーレイルパスを使うメリットについて、詳しく掘り下げていきます。
毎回乗車券を購入する手間を省ける
これが最大のメリットかなと思います。
私の経験上、慣れない異国の地で乗車券 (チケット) を購入するというのは、ぶっちゃけ面倒です。
とりわけハイシーズンの場合、駅の窓口には長蛇の列ができていることも多く、自分の順番が来るまでかなり待たされます。
もちろん、事前に公式サイトからネット予約をすることもできますが、英語または現地語しか対応していなかったり、決済時に日本のクレジットカードが使えなかったり、乗車区間がたくさんあればあるほど、予約作業は大変です。
ユーレイルパスがあれば、そのチケット1枚で各国の国鉄が乗り放題となるため、移動するたびに毎回乗車券を購入する手間を省くことができます。
ゆかり
ただし、ユーレイルパスを保有していたとしても、全席指定制の列車に乗車する場合は、鉄道パス利用者用の座席指定券に相当するパスホルダーチケットを別途購入する必要があります。
例:寝台列車、ユーロスター、タリス、TGV (フランス)、AVE (スペイン)、イタリア高速鉄道 等
私鉄は基本的に乗れませんが、一部利用できる列車もあります。また、地下鉄 (メトロ) などは利用不可です。
予期せぬトラブルにも 柔軟に対応することができる
ユーレイルパスの場合、そもそも自分が乗る便があらかじめ決められてなく、自由に乗り降りできます。(※任意指定制・全席自由席の列車に限る)
仮に目星をつけていた便に乗り遅れたとしても、後続便に乗車可能なので損失額はゼロ。
全席指定制の列車に乗り遅れたときは、パスホルダーチケット (鉄道パス利用者用の座席指定券) の部分だけ買い直せばいいので、安ければ数ユーロ程度の損失で済みます。
ゆかり
鉄道以外にも様々な割引がある
ユーレイルパスを持っていると、鉄道以外にも、フェリー、市内交通カード、ホテル、レストラン、現地ツアー、美術館・博物館の入館料などの割引を受けることができます。
ユーレイルパスが向いている人
上記のメリットを踏まえて、具体的にどんな人が使うとパスのメリットを存分に発揮できるのか、詳しく解説します。
座席予約必須の列車が少ない国に行く人
前述したとおり、ユーレイルパスを保有していたとしても、全席指定制の列車に乗車する場合は、パスホルダーチケット (鉄道パス利用者用の座席指定券) を別途購入する必要があります。
つまり、追加で料金が発生するのです。
ユーレイルパス+パスホルダーチケットの料金を合わせたとしても、各区間の乗車券を個別にバラ買いするよりはトータル的に安くなることも十分あり得るので、一概には言えませんが、
料金面以外にも、「事前予約無しでいつでも乗車可能」というユーレイルパスのメリットの1つが薄れてしまいます。
座席予約必須の列車が少ない国の例
ドイツ / スイス / オーストリア / チェコ / デンマーク / ベネルクス三国 (オランダ・ベルギー・ルクセンブルク) / イギリス
これらの国は、
- 寝台列車 (夜行列車)
- 人気の高い観光列車 (例:スイスの氷河急行・ベルニナ急行 等)
- 隣国へ向かう国際列車の一部
を除き、座席予約が必要な列車がほとんど無く、ユーレイルパスが向いている国といえるでしょう。
鉄道料金が比較的高い国をメインで移動する人
ユーレイル グローバルパス (ヨーロッパ33ヶ国) の場合、鉄道料金が高い国では、ある程度の移動で元が取れてしまう可能性があります。
鉄道料金が比較的高い国の例
ドイツ / スイス / デンマーク / イギリス
西欧・北欧諸国は物価が高いので、物価と比例して鉄道料金も高くなる傾向にあります。
逆に東欧は物価が安いので、鉄道料金も安いです。
行き当たりばったりの旅がしたい人
購入時にあらかじめルートをきっちり決める必要はなく、
- 車窓から美しい景色を見つけてふらりと途中下車したり、
- 現地での思いがけない出会いから行き先を変更したり、
その時の気分で、自由気ままに旅をすることが可能です。
ユーレイルパス VS バラ買い ~どっちが得?~
ここまでユーレイルパスの良さについて語ってきましたが、とはいえ一番気になるのは、
「どのくらい乗れば元が取れるのか」
…という部分ではないでしょうか?
これに関しては、ルートや日数によって損益分岐点が異なってきますので、
- ユーレイルパス (+パスホルダーチケットの合計額)
- 区間乗車券を個別にバラ買いした場合の合計額
の2つのパターンを計算して比べてみるしかありません。
ゆかり
各々の費用感について 参考までに補足すると、
ユーレイルパスの料金
一例として、ヨーロッパ33ヶ国で利用可能な ユーレイル グローバルパス の料金を表にまとめました。(※2020年4月時点)
▼連続タイプ (毎日利用できるタイプ)
利用日数 | 1等 | 2等 |
15日 | 73,800円 | 55,400円 |
22日 | 86,300円 | 64,800円 |
1ヶ月 | 111,700円 | 83,800円 |
2ヶ月 | 121,900円 | 91,400円 |
3ヶ月 | 150,300円 | 112,800円 |
▼フレキシータイプ (指定の日数分 利用日を選んで使うタイプ)
利用日数 (有効期間) | 1等 | 2等 |
4日 (1ヶ月) | 41,000円 | 30,800円 |
5日 (1ヶ月) | 47,000円 | 35,300円 |
7日 (1ヶ月) | 55,800円 | 41,900円 |
10日 (2ヶ月) | 66,800円 | 50,200円 |
15日 (2ヶ月) | 82,200円 | 61,700円 |
また、ユーレイルパスには様々な割引制度があり、下記の条件に当てはまる場合は さらにオトクに旅をすることができます。
- 12~27歳の若者は、ユース料金が適用 (通常の大人料金から最大25%OFF)
- 60歳以上の方は、シニア料金が適用 (通常の大人料金から10%OFF)
- キャンペーン時は、大人・ユース・シニア共に割引価格が適用 (過去のキャンペーン例:ブラックフライデーセール 通常料金から最大15%OFF)
ゆかり
最新の料金をチェックしたい方は、各販売会社の公式サイトで確認できます
普通の区間乗車券の料金
料金や時刻表は、各国鉄道会社の公式サイトで確認できます。
日本の新幹線とは異なり、ヨーロッパの鉄道チケット (区間乗車券) は、ネットで早期購入すれば、大幅な割引が受けられることが多々あります。
正規料金の半額以下になることも珍しくなく、JRと比較すると割引のスケールが大きいです。
つまり、事前にルート (利用する便) をきっちり決めて、かつ、乗車日の1~3ヶ月程度前から予約できる場合、各々の区間乗車券を格安運賃で購入できるため、ユーレイルパスを使うよりも安く済む可能性があります。
ただし、早割乗車券は、便の変更や払い戻しができない等の制約が付くことがほとんどです。
何らかのトラブルで自分が予約していた便に乗り遅れてしまった場合、そのチケットはただの紙切れとなってしまいますのでご注意ください。
ユーレイルパスを購入する
鉄道パスの現地購入は割高となり、種類によっては購入できないものもあるため、日本の旅行代理店 または オンラインでの事前購入をおすすめします。
販売会社の例
- 欧州エキスプレス (マックスビスタトラベル):ヨーロッパ鉄道専門の旅行会社
- レイルヨーロッパ:フランス国鉄とスイス国鉄の資本により設立された公的法人
ユーレイルパスの詳しい購入方法については、こちらの記事にまとめました
ユーレイルパスの購入方法【日本出発前の手配がおすすめ】航空券購入時に発行されるEチケット (電子航空券) とは異なり、ユーレイルパスは 購入後に紙のチケットが自宅に郵送されます。
つまり、パスが手元に届くまでにある程度の日数がかかりますのでご注意ください。
さいごに
さいごに、私の個人的な意見を書きます。
旅のスタイル・旅に求めるものは人によって様々ですので、私は「ヨーロッパを周遊するなら絶対にユーレイルパスを使ったほうがいい!」とは思いません。
毎年一度はヨーロッパを訪れるくらい欧州大好きな私ですが、鉄道旅でユーレイルパスを使うときもあれば、各区間の乗車券を個別にバラ買いするときもあります。つまり、ケース バイ ケースなのです。
ユーレイルパスを検討する上で「元が取れるか否か」は、判断材料の1つとして重要度が高いことは間違いないですが、
- 慣れない予約サイトに苦戦して何区間ものチケットを購入する時間
- 駅で毎回列に並んで順番待ちをする時間
から解放されるならば、
結果的に割高になってしまったとしても、「金銭的な得」よりも「時間的な得」のほうに魅力を感じる人がいることも事実でしょう。
それぞれのメリット・デメリットをしっかり理解した上で、あなたの旅の目的に合わせて選んでみてくださいね^^
ユーレイルパスの購入は、各販売会社の公式サイトより受け付けてます
※鉄道パスだけでなく、区間乗車券の購入 (バラ買い) も可能です
ܤ ܤ ܤ ܤ ܤ
私もユーレイルパスを使ってみたい!と思った方は、以下の関連記事も合わせてご覧ください^^
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